外配信中に配信者が殺害された事件についての弊社の考え
弊社では常日頃、各配信サイトのライバー(配信者)さんの活動を見ていて心配していたことがあります。図らずも、今回の事件は心配が的中してしまった印象を持ちましたので、改めて書き残しておきたいと思います。誰が悪いとかいう話ではありませんので御了承くださいませ。
先ずは、インターネット配信の過去と現在を記しておきます。
インターネット配信が始まった当初は、閲覧がアプリではなくウェブサイト中心だったこともあり、そのサイトに広告を貼ることで運営側が収入を得るモデル(広告モデル)でした。そのため、投げ銭的な機能は全くなく、配信をする方は空き時間に趣味的に行っているのが主流でした。当然、彼らにはお金は全く落ちない形になります。今でも続く配信プラットフォームで言うと、以前のTwitcasting(ツイキャス)はそういうモデルでした。但し、この方法では運営側が得る収入は少なく、急速な事業拡大は難しい状況でした。
その後、海外の配信プラットフォームが日本に進出してくることで海外で主流だった視聴する側がアイテムを購入してお気に入りの配信者に投げるモデル(投げ銭モデル)が入ってきて、日本でも配信プラットフォームが続々と出てくるようになりました。それに伴い、広告モデルを取っていた配信プラットフォームも投げ銭モデルへの転換を余儀なくすることになったと記憶しています。これと同時に配信者数の増加や、視聴者数の増加が進み、誰でも配信をする側になり、今のような形態になっていきました。
ただ、配信者数や視聴者数は無限に増えるわけではありません。配信プラットフォームが増えるに従って、配信者や視聴者をプラットフォーム間で奪い合う状態になっていきます。当然、そこには「大手配信者の引き抜き」と同時に「彼らの配信を視聴していた人の移動」が行われるようになりました。ただ、それを行うには引き抜きをする側も、引き抜きをされる側以上の魅力を用意する必要があり、それは「還元率の増加」や「イベントの増加」という形で実現することになります。残念ながら、それらは視聴者側の負担が増大するだけという問題点も抱えており、結果として配信者が乞食行為(アイテム乞食とも呼ばれる、アイテム要求が主になる配信者の増加)を招くことになりました。
このあたりから徐々に風向きが怪しくなってきます。
コロナ禍前後から配信者のアイテム要求に応える形で、視聴者が配信者に対してアイテムを投げる条件的なものを提示する事例も出てきたように思います。これは、投げ銭モデルになったことに伴い、配信での収入のみで生活をする配信者の増加も影響しているように思えます。視聴者が投げるアイテム(課金できる金額)には当たり前ですが限りがあるわけなのですが、残念ながら、そこを理解していない配信者も増えてきました。結果として、視聴者を打ち出の小槌のように使う配信者が発生し、同時に、配信者の弱みにつけ込むような視聴者が出てきたという状態になります。ある意味、配信者と一部視聴者との間で騙し合いが行われる事態になります。
現在は色恋とも呼ばれる形で視聴者の気持ちの隙間に入り込みお金を引き出す配信者が現れ、用無しになったら捨てる行為(ブロック行為)を行うことでトラブルに発展する人達を見かけるようになってきています。ただの言い争いとか誹謗中傷合戦で済めば良い方だとは思います。しかしながら、人間は千差万別であり、全ての人に同じ対応をしても全て違う結果が返ってくるのが当たり前なのです。そこを見誤ると、精神的に追い込まれた人達が最終的に何をするのかは、昨日の事件を見れば判る通りです。
これ、たまたま被害者が配信者であったので「異例の事態(特別なこと)」と思われる方がいらっしゃるかと思いますが、配信者をキャバ嬢とかホストに置き換えると普通に起こりうる出来事なのが理解できるかと思います。要するに、配信者→キャバ嬢orホスト、視聴者→御客様、爆投げ師→太客に置き換える事が出来る世界(いわゆる夜職と同じ世界)だと言えます。配信者側も「自分は一般人」だとは思わずに、不本意でしょうがキャバ嬢やホストに置き換えて考える必要があるという事であり、彼らと同じようなりスクを抱えているのだという意識を常に持つ必要があるという事なのです。そういう意識が欠けているから事件を呼ぶような行動をし、最終的に事件が発生するのだという事なのです。
配信プラットフォームが投げ銭モデルから脱却できない限りは、永遠に配信者が常に最悪の事態を想定して行動しなければならない状況が続くでしょう。目先の金よりも命を大事にして欲しい所ではあります。

合同会社くまさん プロダクション事業部の責任者です。